2011 年 67 巻 4 号 p. I_213-I_222
本稿では,国(政府)の公共事業の財源についての政治的判断を支援することを企図して,マクロ経済動向に及ぼす影響を加味しつつ,公共事業関係費の「水準」と「調達方法」を毎年どのように「調整」していくべきかの基本的な考え方を整理することを試みた.そして,市場における需要が供給を上回っているインフレ状況にある時には,インフレ緩和のために緊縮財政を基本とすることが得策であり,公共事業においては,公債ではなく,必要に応じた増税の可能性も視野に収めながら税収によって財源を調達することが得策であることを指摘した.一方で,逆にデフレ状況にある時には,デフレを緩和するための積極財政を基本とすることが必要であり,そのための財源については,定常的な税収に加えて公債を自国通貨建ての内債として発行することが得策であることを指摘した.