2009 年 65 巻 1 号 p. 26-38
鉄道事業においては,軌道を適正な状態に維持するための経費等の最適化を図ることは,経営効率化のために重要な課題である.一方,鉄道事故の発生に伴う社会的損失は極めて大きく,鉄道事業者にとっても損失が大きいことから,事故のリスクを定量的に評価し,安全で安定した輸送を確保するための方策を探ることは重要である.本論文では,筆者らがこれまでに構築した最適軌道保守計画策定モデルにより軌道保守費用と軌道狂いの悪化に伴う列車脱線事故の発生を考慮したリスク想定費用の推計モデルを提案する.これらのモデルに基づく推計方法を実線区に適用し,望ましい軌道状態を具体的に提示する.最後に,モデルの一般線区に対する適用方法を示し,数値例を用いた試算によって得られる結果が妥当であることを検証する.