2010 年 66 巻 1 号 p. 64-77
長崎市では扇形の出島を顕在化させるために,出島石垣の発掘,解体・修復が進められてきた.しかし,出島築造時の設計法や施工法に関する歴史的資料がほとんど残されていない.本研究は,出島の築造と石垣の施工に関する技術を,石垣発掘調査や測量とGISによる解析より復元すると共に,その結果に基づく出島石垣の修復と復元の方法を述べたものである.まず,GISを用いて出島当時の境界を推定し面積を計算した.次に,扇形とされてきた出島の外周を,絵図の照査と石垣根石の測量から,直線を組合せた折れ線で構成されていることを明らかにし,この形状で修復を行った.さらに,古絵図の照査より,出島北側対岸の斜面の人工的形状に着目し,出島埋め立て土量の評価と採掘場所の特定を行った.