2006 年 62 巻 4 号 p. 672-688
アーチダムの耐震安全性を評価する上で,ダムの常時挙動と耐荷機構を明らかにしておく必要がある.このため,アーチダム鉛直方向の施工ジョイント部での剥離とすべり,再接触を考慮できる数値解析モデルを,コンクリートブロックによる一面せん断試験に基づき提案した.提案モデルを組み込んだ三次元有限要素解析手法を用いて,気温の年変化と貯水位の変化によるアーチダムの解析を行い,堤体変位計測データと比較した.その結果,解析結果は計測値と良好に一致し,アーチダムの変形挙動を評価できることが明らかとなった.また,アーチダムの堤体では,鉛直方向の施工ジョイント部の剥離やすべりによる状態変化により,作用荷重の推移に伴う力の伝達領域が形成され,アーチダムの耐荷機構が明らかとなった.