2012 年 68 巻 7 号 p. III_103-III_111
施設園芸栽培では,塩類集積を防ぐ目的で休閑期間に除塩灌水を行う.しかし,商品作物栽培後に栄養塩が土壌に残留していると,灌水とともに溶脱した栄養塩が水質汚濁の原因になる.本研究では,ナス施設栽培農家実圃場の休閑期を対象に,クリーニングクロップ栽培が休閑期(クリーニングクロップ栽培,除塩灌水,土壌還元消毒)の窒素,リン溶脱に与える影響を2年間調査した.その結果,クリーニングクロップによって,休閑期の窒素溶脱量を2010年には12.2 g m-2,2011年には5.4 g m-2削減できた.この違いはクリーニングクロップ栽培前に土壌中に残存していた無機態窒素の差によるものと推察された.一方,リンに対しては,クリーニングクロップを栽培しても溶脱量は有意に低減しなかった.これは,クリーニングクロップのリン吸収量に比べて,供試圃場の土壌リン酸蓄積量が非常に多かったためと考えられる.