2017 年 73 巻 4 号 p. 143-158
東日本大震災では,膨大な災害廃棄物の発生により,迅速な救助活動の実施やその後の復興活動の妨げとなった.本研究では,近い将来に発生が予測されている南海トラフ巨大地震の災害廃棄物の発生量を把握する.対策を実施しない「BAUシナリオ」と,古い住宅を耐震化する「耐震シナリオ」,津波の浸水域内に立地する住宅を任意の割合で比較的安全な地域に移転する「撤退シナリオ」を設定し,その対策による災害廃棄物の発生量の軽減効果を検討する.本研究の対象は静岡県西部地域とし,2010年から2050年までを5年ごとに将来の社会状況下(人口,世帯,建築物の延床面積)を考慮した推計モデルを3次メッシュ単位で構築する.最終的には,このモデルを用いて,シナリオごとに地震または津波によって建築物から発生する災害廃棄物の発生量を把握する.