土木学会論文集G(環境)
Online ISSN : 2185-6648
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地球環境研究論文集 第25巻
平成27年関東・東北豪雨時のつくば市真瀬における水蒸気同位体比時間変動の決定要因に関する研究
野本 大輔芳村 圭
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2017 年 73 巻 5 号 p. I_275-I_281

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抄録

 近年,極端現象増加の報告等により,温暖化など気候変動に対する社会的関心はますます高まりを見せている.しかし極端現象の一つである豪雨などの予測は,その現象自体が非常に局所的な空間スケールで発生するものであるため,これを予測することは困難である.一方,水同位体比は水の相変化に感度を持つ物理量であり,局所的な降水過程の詳細を探ることに利点がある.本研究では,平成27年関東・東北豪雨時に茨城県つくば市真瀬で観測された同位体データを用いることで,豪雨時の同位体比変動について解析した.結果として,短期間に異なる海域からの水蒸気が到達したことが明らかになり,IsoGSMによる水蒸気同位体比(δ18O)が9月8日から10日にかけて増減するという挙動が,水蒸気の起源の違いによって引き起こされたということがわかった.降水量効果とは降水同位体比と降水量の統計的な見かけ上の関係のことを通常指すが,この時の水蒸気同位体比の短期変動は,降水をもたらした水蒸気塊が観測地に到達するまでにどれくらいの降水をもたらしてきたかというイベントスケールでの降水量効果による寄与が大きいということがわかった.

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© 2017 公益社団法人 土木学会
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