2022 年 78 巻 5 号 p. I_233-I_238
秋田県東部には玉川温泉の源泉である硫酸酸性水(98℃,湧出量9m3/min,pH 1.1-1.4)を起源とする玉川酸性水が流れている.現在は中和処理施設の稼働により田沢湖のpHは4.5から5.8程度まで上昇したが,1940年以前に観測された6.8には回復しておらず,水環境や生態系はまだ取り戻せていない.そこで本研究は玉川酸性水の改善および石炭灰の利用拡大を目的として,フライアッシュを用いて中和剤を作製した.中和実験を行い,pHの変化や中和剤および処理水を分析することで有効性を評価した結果,弱酸性域では中和剤の崩壊や重金属イオンの溶出は見られず,安定して利用できる可能性が示唆された.