2010 年 66 巻 4 号 p. 471-489
本論文では,最初に,平成16年四国に上陸した6回の台風がもたらした水災害を事例に,河川整備とともに,維持管理の重要性を示している.次に,明治時代の自然状態の利根川とカナダの自然河川,および我が国一級河川の基準地点のデータ等を用い,次元解析から導かれた河川の無次元河幅,無次元水深と無次元河道形成流量の間に成立する力学関係式が,治水と環境の両面から望ましい川づくりと河川管理の指標となること,船底形断面形が望ましい横断面形であること,無次元河幅,無次元水深等が決まる力学関係の中で無次元掃流砂量も決まること,これらの関係式が多自然川づくりにおいて重要な役割を果たすこと,を示している.最後に,地球温暖化時代に向かい,治水,利水,河川環境を総合した多自然川づくり計画の普遍化の方向性について議論している.