2014 年 70 巻 4 号 p. 412-423
著者らは,幌延深地層研究所の250m調査坑道において弾性波および比抵抗トモグラフィにより,掘削損傷領域の弾性波速度や見掛比抵抗値の経時変化を計測している.弾性波トモグラフィ調査では,坑道掘削に伴い,壁面から約1mの範囲で弾性波速度が低下した.一方,比抵抗トモグラフィ調査では,掘削に伴う顕著な比抵抗変化は見られなかった.さらに,坑道壁面の割れ目の観察結果に基づいて,調査領域の三次元割れ目モデルを作成して,坑道掘削後の弾性波トモグラフィ調査で得られる各測線の弾性波速度と割れ目密度の関係を分析したところ,割れ目密度の増大とともに弾性波速度が低下することが明らかとなった.このことから,弾性波トモグラフィ調査と割れ目密度の検討により,掘削損傷領域を適切に評価できることが示された.