2017 年 73 巻 4 号 p. 311-329
補強土壁構造物は,これまでの地震時の実績より抗土圧構造物よりも高い耐震性が示されている.また,多くの機関で実施された実験により,その耐震性能の高さが証明されている.しかしながら,既往の研究はジオテキスタイルを用いた室内実験や模型実験が多く,全体安定などの挙動は示されているが,補強材軸力の効果や挙動については十分に把握されていない.本研究では,支圧抵抗と摩擦抵抗を組み合わせたアンカー式の補強材を用いた補強土壁において,2011年東北地方太平洋沖地震の余震時の補強材軸力を計測することができた.その結果,地震時には支圧補強体と摩擦補強体のそれぞれが抵抗力を発揮し,その抵抗力は補強材の土被りが小さい位置では支圧補強体,土被りが大きい位置では摩擦補強体が効果的に抵抗力を発揮することが示された.