2017 年 73 巻 4 号 p. I_1261-I_1266
堤防周辺における空気湧出の発生は,高水位作用を受けた堤防の安全性低下に関する予兆と考えられるため,その発生要因や発生時の堤体内の状況を理解することは工学的に重要である.本研究では,裏のり尻で空気湧出が確認された堤体に対して,堤体内部構造を把握するために表面波探査を行った.また,土質構成を確認するため,空気湧出発生箇所で試掘を行った.その結果,空気湧出が確認された付近では,高水位前後でS波速度は低い値を維持していた.土質構成は層厚1m程度の乾燥したシルト層の下部に湿潤状態の砂層が分布しており,砂層からは湧水が発生していた.このことから,S波速度の低速度領域では飽和状態かつ間隙水圧が作用していると考えられ,砂層からの水が不飽和状態にあるシルト層へ浸透する際に空気湧出が発生したと推定される.