抄録
洪水災害で犠牲にならないために早期の積極的かつ適切な避難行動が求められるが,実際に避難行動をする住民は多くない.地形や環境条件によって被害の様相が異なる洪水災害には地域差があり,適切な避難行動を促進する方策を一般論で語ることは難しい.本研究では徳島県那賀町和食地区を対象とし,洪水氾濫解析及び住民への聞き取り調査を実施した.2014年台風11号及び2015年台風11号における浸水の様相と住民の避難行動を検証した.住民避難を妨げる要因には,浸水経験による慣れ,不十分なリスク理解,正常性バイアスの作用などがあることを示した.これを防ぐためには専門家と知識を共有するための防災研修や避難訓練を通して,避難しないことのリスクについての理解を図ることが重要である.