2018 年 74 巻 4 号 p. I_1285-I_1290
荒川流域など洪水常習地帯に江戸時代に発達した水塚には,水除け機能を持つとされる構え堀が併設されている場合がある.しかし,設置理由には水塚のための盛土材料を取るためなど諸説あり,その減災機能は明らかになっていない.本研究では,構え堀構造の持つ水除け機能を水理実験で明らかにすることを目的とした.既往文献や現地観測を踏まえた調査により,構え堀のタイプを前面型,L字型,馬蹄型に分類した.構え堀,屋敷林,水塚をモデル化した屋敷模型を作成し,構え堀タイプと堀がないケースを合わせて7ケースで実験を行い,水面形と流体力を計測した.吉見地方に多く存在した構え堀の形態である幅の広い前面型と馬蹄型の構え堀は,水塚の避難所(倉)における水位,流体力ともに大きく減少させた.