2018 年 74 巻 4 号 p. I_1315-I_1320
近年,地球温暖化により大規模水害が頻発すると懸念されており,ソフト防災対策の強化も求められている.ソフト防災対策の成否は,住民が水害危険度を適切に認識しているかに依存するが,その実態は明らかではない.本研究は,住民が経験した水害の被災規模が危険度認識に与える影響を評価するため,詳細な浸水深データが整備されたニューヨーク市の沿岸部のハリケーン・サンディによる被災住宅地を対象に,不動産取引価格と浸水深の関係をヘドニック・アプローチを用いて分析した.その結果,浸水深の増加に伴う不動産取引価格下落が確認され,被害規模に応じた水害危険度認識形成の可能性が示唆された.