2018 年 74 巻 4 号 p. I_271-I_276
土壌水分量は長期的な水循環変動を考える上で,また,アジア地域における天水に頼る農業活動において重要な水文量の一つである.本研究は人工衛星GCOM-Wに搭載されたマイクロ波放射計AMSR2を用いて,広域的に高頻度で土壌水分を推定する際に問題となる,6.9GHzのフットプリント内の不均一性のうち,水域と灌漑域に着目し,これらの影響を除去した陸域のみの土壌水分を推定する手法を検討した.対象地域は,カンボジアのトンレサップ湖の西部に位置するPursat観測サイトとした.2013年8月~2014年7月を対象に,6.9GHzフットプリントから水域と灌漑域の影響を除去した輝度温度を計算し,次に,LDAS-UTに観測値として入力し,Pursat観測サイトでの10cm深度の土壌水分観測データで検証した.その結果,地表面に水面を含む地域での土壌水分推定精度を改善できることを示した.