2018 年 74 巻 5 号 p. I_85-I_90
吉野川流域を対象に,将来の河川流量の変化がダム利水操作に及ぼす影響を分析した上で,将来気候下での適応策の方向性の分析を行った.気象研究所MRI-AGCM3.2Sの現在気候実験と21世紀末気候実験の気候推計データを入力値としたダム群の利水操作モデルを組み込んだ流出計算により,両気候における河川流量を推定し,流況の変化がダム利水操作に与える影響を分析した.その結果,吉野川流域では,特に夏季の流量の低下に伴い早明浦ダムの平均貯水量が低下するとともに,年渇水被害値が増大する可能性が示された.適応策の方向性を検討した結果,ダム貯水池の容量再配分や弾力的操作の導入による利水操作の増大によっても渇水被害値は多少減少するが,水需要を抑制する効果の方が大きい可能性が示唆された.