2018 年 74 巻 5 号 p. I_853-I_858
ダムを持続的に管理するために堆砂対策は重要である.ダム湖への経年的な堆砂により,ダム下流河川の河床低下,水質,付着藻類,底生動物および魚類への影響,海岸侵食等の課題が生じ,その解決策の一つとして土砂還元が有効である.土砂還元として,出水時の通砂や置土による方法があるが,土砂還元量や下流影響に係る経年的な実績データは多くない.今般,20年に亘って累計約68万m3の置土を継続的に実施してきた発電用ダムの下流環境のうち河床形状・構成材料,付着藻類および底生動物の調査結果を整理し評価した.合せて,堆砂対策における下流土砂還元の経済性,通砂量を増加した際の下流ダム調整池の堆砂量の予測,関係者とのコンセンサスの構築について検討した.今後,土砂還元を多くの地点で実施または増量するための可能性を示唆した.