2021 年 77 巻 2 号 p. I_1099-I_1104
播磨灘の窒素動態への気候変動影響を明らかにするため,陸域淡水・汚濁負荷流出-海域流動・水質・底質モデルを用いて,現在気候20世紀末とRCP8.5の将来気候21世紀末のそれぞれ20年間の予測計算を行うとともに,水と窒素のフロー解析を実施した.水のフローには現在気候と将来気候で顕著な違いが見られなかったが,TNとDINについては,夏~秋の高温化によって一次生産が低下し,海底への堆積が減少するため,将来気候の海域間フローが全体的に現在気候より増加し,播磨灘から流出しやすくなると予測された.冬~春では,水温上昇に伴う一次生産の活性化によって将来気候のDIN消費量は現在気候の約2倍に増え,季節変動として見られる海水中のDINの減少が気候変動によって加速すると予測された.