2011 年 67 巻 5 号 p. 67_I_45-67_I_56
公共交通サービスの社会的経済価値を評価する際,直接的利用価値のみに着目した費用便益分析では,オプション価値や非利用価値を無視することになり,便益の過小評価になると考えられる.本稿では,測定手法としてCVMではなく,主として国外で研究が進んでいる表明選択法(SCM)を提案し,ケーススタディとして富山ライトレールおよび富山地方鉄道を対象にしてオプション価値を含んだ経済価値を測定した.本稿の結果と既往研究の知見を踏まえると,対象とした鉄道は,消費者余剰が300~500円/月・世帯,オプション価値が800~1,200円/月・世帯程度であると推定できた.さらに,富山ライトレールのオプション価値便益を算出し,そのオプション価値便益の持つ意味を吟味し,公共交通機関の正当な評価のためにオプション価値を含めた検討の重要性を指摘した.