抄録
交通政策をはじめとした土木施設の整備・運用に関する意思決定において,社会学的・心理学的に及ぼされる影響を十分に踏まえることは必ずしも容易ではない.そのような影響のなかでも,経済状態などの客観的指標に比して主観的指標については十分な検討がなされていない.本研究では,交通行動が幸福感に及ぼす影響について検討するため,質問紙調査を実施して移動時の主観的幸福感の規定因を探索的に検討した.
その結果,交通手段の違いによらない,個々の移動の幸福感の集積値として移動に対する幸福感を表すことができることが示された.また移動時幸福感の規定因として,移動時風景の選好の程度や移動目的,道路/車両の混雑度,移動中の活動が移動時幸福感に影響を及ぼすこと,交通手段によってその影響の有無や程度に差があることが示された.