抄録
まちづくりにおいて有益な知見を得る方法として,これまでは自然科学的な手法による定量的な分析が多く行われてきたが,まちづくりに関わる人々の思いを理解するためには,「物語」を解釈するという解釈学的な方法論を用いることが不可欠となる.本研究では,埼玉県川越市にて進められている「交通まちづくり」を対象として,交通問題の解決に向けた合意形成プロセスについて考察するため,関係者へのインタビューや会議傍聴等を行い,収集した個々人の語りからまちづくり全体の物語を構成し,その解釈を行った.その結果,町並み保全の取り組みからつながる交通に対する問題意識の共有化,あるいは交通問題の検討に向けて基本的な合意がなされていたことが,交通まちづくりを進展させていく重要な要素であることが示唆された.