2015 年 71 巻 5 号 p. I_415-I_424
ボトルネック通行権取引制度は,ネットワーク形状によらず社会費用を最小化できるが,複数ボトルネックの場合には必ずしもパレート改善しないことが知られている.本研究の目的は,合流部に通行権取引制度を導入し,パレート改善を達成する方法を示すことである.そこでまず,V字形ネットワークを対象に通勤交通のモデルを定式化し,通行権取引を単に導入するだけでは必ずしもパレート改善しないことを示し,通行権購入価格が制度導入前の渋滞待ち時間による費用よりも高くなる利用者がいることが原因であることを明らかにした.次に,パレート改善達成のための通行権導入施策を3種類提案し,パレート改善できることを示した.また,通行権収入を使ってボトルネック容量を増強すれば,パレート改善と同時に社会費用はさらに小さくなることも示した.