2018 年 74 巻 5 号 p. I_419-I_429
コンパクトシティ政策を推進するセクターの多様化が進む一方で,セクター間の波及効果を意味するクロスセクターベネフィットの実態は十分に言及されていない.その存在次第では,これまで地方自治体が主たる目的としていなかったセクターにおいても波及効果が生じている可能性がある.本研究では,地方自治体が目的とするセクターごとに代表的な評価指標を設定し,その数値を実際に計測することでセクター間の関係性を定量的に分析した.その結果,評価指標値の傾向はセクターごとに異なる一方で,地方自治体が想定していなかったセクターで高い評価結果を示す場合があった.さらに各セクター間に統計的に有意な相関性が確認されたことから,コンパクトシティ政策にクロスセクターベネフィットが存在する可能性を初めて裏付けることができた.