2019 年 75 巻 5 号 p. I_233-I_249
近年甚大な被害をもたらす洪水が頻発している.平成27年関東・東北豪雨を受けて水防法の一部が改正され,洪水浸水想定区域が見直された.本研究では,まず最適経済成長モデルに基づく復興投資を考慮した洪水の経済被害評価手法を開発し,見直された洪水浸水想定区域を対象に,資産の復興とともに生産が回復することを踏まえた洪水被害評価を行った.その結果,従来の資産損失額による洪水被害計測は過小評価になっている可能性のあることを示唆した.次に,甲府都市圏において,洪水被害を防ぐために立地適正化計画制度を活用した立地誘導による洪水被害対策を検討した.そこでは,洪水被害地区から安全な地区への立地誘導は,従来型の堤防建設による洪水対策と比較して有効となり得るのかを検討した.