2019 年 75 巻 5 号 p. I_353-I_363
我が国は巨大な自然災害のリスクが高く,近年では国土の強靭性(レジリエンス)確保が重要な政策目標とされている.そのためには,どのような災害に対してどのインフラがどの程度脆弱であるかを把握し,優先度や対策効果を定量的に明らかにする必要があるが,現在のところそのような知見は十分ではない.そこで本研究では道路ネットワークに注目し,過去の震災時に得られたプローブデータから推定された道路リンクの破断率および速度低下率を用いて,災害発生時の地域間移動の所要時間変化を推計し,地域ごとの道路ネットワークの強靭性評価を行った.その結果,南海トラフ巨大地震の被災想定エリア内の広い範囲において,道路ネットワークの強靭性の地域間格差の存在が示唆された.また,新規道路整備等の強靭化施策による改善効果も明らかになった.