2019 年 75 巻 5 号 p. I_375-I_386
本研究では,交通インフラ整備がもたらすマクロ経済上の効果及び各地域の人口や経済力の分布の変動をシミュレーションするため既往研究で提案されているモデル(MasRAC)を用いて,新幹線の新規整備効果を推計した.その結果,新幹線の新規整備が我が国の実質GDPの向上に寄与し,一定のマクロ経済改善効果があることが確認された.地方別の生産額及び人口の変化に着目した分析では,現状整備との比較 においてリニア中央新幹線の整備や新幹線の全国整備を進めた場合,関東地方の人口が最大4.2%,GRPは最大5.3%の水準で少ない一方,各地方においては人口等が多く,「分散化」効果があることがわかった.これらの結果は,新幹線の新規整備が我が国全体の成長力向上に寄与し,また人口と経済力の偏在状況を改善する効果を持つことを示すと言える.