2021 年 76 巻 5 号 p. I_221-I_232
低炭素社会の実現が求められる一方,巨大自然災害に対するエネルギー供給システムの脆弱性が露わになり,非常時におけるエネルギー供給を可能とすることの必要性が認識されるようになった.本研究では既成市街地を対象に,平常時の低炭素化と非常時のエネルギー供給を両立する地域に更新するために,立地誘導とエネルギーシステム導入を同時に実施していくことの有効性を検討するモデルを開発した.構築したモデルを地方都市に適用し,施策シナリオを設定し導入効果を評価した.その結果,立地誘導が 2 つの目標に与える効果は,通常はトレードオフの関係にある一方,立地誘導の際は,適切な土地利用の用途混合を考慮した分散型エネルギーシステムを導入することによって,非常時エネルギー供給率と CO2 排出量への効果がより高まることが明らかになった.