2021 年 76 巻 5 号 p. I_485-I_494
本研究では,免許返納に対するイメージについて運転免許の返納者と保有者を対象に比較を行った.その結果,保有者の方が悪いイメージを多く抱いていることが明らかとなった.免許返納後の生活は,返納前のイメージほど悪くない可能性が示された.このことから,一度免許返納後の生活を体験させることも免許返納の促進に有効と考えられる.免許保有者の免許返納意識に関する構造モデルを構築したところ,免許を返納することの正義感に対する良いイメージや,免許を返納することは自分が否定されているから嫌だと感じる悪いイメージが,免許返納意識に影響している結果となった.運転能力の低下や老いを否定するのではなく,免許返納後の生活や,良いイメージを見つけていくことが運転免許の自主返納につながることが考えられる.