2022 年 77 巻 5 号 p. I_213-I_223
近年我が国では,政治的論争はいくつかあるものの大規模な「政治運動」は起きていないことが,他の先進諸国と比べた顕著な特徴であると言える.これは「政治的無関心」の問題であるだけでなく,日本人が政治に対して抱いている「忌避感」の問題だとも言われるが,この忌避感についてはこれまで学術的な解明は不十分な状況にある.本研究ではこの忌避感を日本人が政治に対して持っている「恐怖・軽蔑感」と捉え,これに「対立忌避傾向」「大衆性」「非ニヒリスト度」が影響を与えているという仮説を設定し,検証を行った.その結果,「対立忌避傾向」や「大衆性」の下位因子である「自己閉塞性」および「傲慢性」が高い人ほど「政治恐怖・軽蔑度」が高くなること,「非ニヒリスト度」が高い人ほど「政治恐怖・軽蔑度」が低くなることが示された.