2022 年 77 巻 5 号 p. I_449-I_467
フランスの地方都市では歩行者専用空間の整備が進み,「歩ける中心市街地の賑わいの創出」に成功している.本研究では,道路空間の再配分と都市空間の再編成を経て,車に占拠された中心市街地を見事に再活性化させた経緯を,導入した公共交通手段,公共空間整備の内容と共に整理する.特に,道路空間の再配分を伴った都市空間の再編が,なぜフランスで可能であったのかその背景と要因を明らかにする.そして「歩ける都市・Walkable City」の実現を可能にした,環境保全と福祉を重視する国の法整備や,都市空間再編成政策を実行する主体である自治体の在り方を示す.また,自動車利用の利便性を無視せず,車道を削り歩行者と自転車専用道を増設する新しい都市空間再編成を受け入れてきた,フランス国民の意識の変化や大きな社会の流れを考察する.