抄録
本研究は,地域高齢者の実車評価による不安全な運転行動の特徴を把握するため,「高齢者講習」受講者約9千人の「運転行動診断票」の記述データから不安全な運転行動の細目を生成し,因子分析とクラスター分析から,不安全な運転行動のパタン化を試みた.さらに,7つの不安全な運転行動のクラスターと,「認知機能検査」の結果,年齢,運転頻度・運転車両,講習で希望する AT/MT との関連を分析した.これらの結果から,高齢者の不安全な運転行動は,認知機能低下等によって一律に形成されず,a 正常加齢,b 正しい運転知識の未修得,c 日頃運転する車両による認知・操作特性,d 運転頻度の減少による知覚運動協応技能の困難,e「認知機能検査」で測定した記憶力・判断力低下という,複数の要因が相互に影響し合い,表出することを実証的に明らかにした.