2022 年 78 巻 3 号 p. 93-104
パーソントリップ(PT)調査の新たな活用法として世帯不在率の分析が提示されている.本研究は,その応用として時間利用調査である社会生活基本調査を用いて個人・世帯不在率の経年変化を分析する.まず,本調査データに含まれない在宅・不在を推測する方法を提案し,その妥当性を検証する.そして,平休日別の個人・世帯不在率の1986-2016年の経年変化や,世帯年収別の世帯不在率の経年変化の差異を示す.さらに,社会生活基本調査と全国PT調査から算出される非外出率の比較より,両調査の差が近年の男性20歳代や高齢者層で特に大きく,PT調査におけるトリップの記入漏れ等を示唆する結果を得た.これはPT調査の経年比較で報告される若者の外出率低下は実際より過大で,高齢者の外出率上昇は過小である可能性を意味する.