2022 年 78 巻 6 号 p. II_634-II_650
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により,世界各国で健康的,経済的な被害が生じるとともに,社会的な分断も問題となった.日本でも飲食店等の営業自粛については賛否が分かれ,また「自粛警察」とも呼ばれる過剰な態度・行動を通じて社会的な軋轢が発生した.しかしこうした態度に関する心理学的研究は少なく,また特に時間的な変化を加味した分析はほとんどない.本研究では,2020年5月と10月に行われた「新型コロナウイルスに関する行動・意識調査」の結果を分析し,5月に比べ10月では,感染に対する懸念,他人の視線に対する懸念,自粛への賛成度,自粛警察的態度が有意に緩和していることや,テレビのキャスター・司会者を参考にする者は感染への懸念が強く,他者の視線を気にし,自粛警察的態度を持ちやすいこと等が示された.