2022 年 78 巻 6 号 p. II_704-II_716
高齢者の事故防止策の一つとして,高齢運転者の自動車の運転を抑制する施策があり,その究極のものが免許返納による運転の放棄である.人口密度の低い地域を抱える自治体にとっては自動車を代替する移動手段の提供が難しく,自動車に依存した生活を継続する高齢者が多数存在する.本研究では,山間地を多く抱える山梨県上野原市の免許返納者に対してアンケート調査及びインタビュー調査を行い,免許返納に至る心的要因を抽出し,それを既存の心理モデルと組み合わせることで,高齢者の免許返納の心的プロセスモデルを構築を行った.その結果を用いて高齢者対象に免許返納意識を尋ねる調査を行い,抽出した要因に関する情報提供が,高齢運転者の返納への意識に有意な変化をもたらしたことから,本研究で抽出した要因の有効性が確認できた.