2024 年 80 巻 25 号 論文ID: 24-25029
本研究では,アンモニア酸化細菌(AOB)による亜酸化窒素(N2O)生成を制御する上で有効な指標であることが明らかになりつつある一酸化窒素(NO)に関して,NOを工学的指標としたN2O生成抑制技術の開発に資する基礎理論の範囲をAOBのみならず脱窒細菌等を含む複雑な微生物系へと拡張し,下水処理場でのN2O生成抑制技術の開発に繋げることを目的に実験的検証を行った.注射器を用いた簡易的なNO及びN2Oの生成・分解能試験法を考案し,下水処理場で採取した活性汚泥を試験に供した結果,嫌気槽,好気槽及び無酸素槽のいずれについても,NOがN2Oの転換率や生成速度の支配因子であることが確認された.本研究結果により,NOを介して活性汚泥微生物の相互作用を包括的に観察することが,N2O生成の推定や抑制に資する可能性が示された.