2024 年 80 巻 27 号 論文ID: 24-27030
本研究では,石狩川流域を対象として過去数十年間の気候において発生した大雨事例の発生頻度および気象要因の分析を実施した.観測情報によると1990年代後半以降,大雨事例の発生頻度が増加しており,特に停滞性の前線による発生数が約2倍増加したことが明らかとなった.また,流域平均日降雨量が100mm/日を超え,既往最大規模の大雨が観測された昭和56年水害は2日間にわたり前線と遠方の台風の影響を受けていたことで知られている.本論文ではアンサンブル気候予測情報の過去実験を用いて極端豪雨の標本数を十分に確保することで,過去気候において既往最大事例の降雨規模以上となる大雨事例は,前線と遠方の台風の組み合わせよりも前線単体によって発生する確率の方が2倍以上高いことを示した.