2025 年 81 巻 17 号 論文ID: 25-17025
海浜内部の水位は前浜の漂砂過程に影響するため,これまで遡上波と海浜内部の間で生じる浸透・滲出流と前浜漂砂の関係が整理されてきた.浸透流の影響は漂砂素過程を追跡した数値解析によっても検討されたが,海浜内部の不飽和帯の水分保持状態は無視され,サクションにより生じる付着力の漂砂過程への影響は十分には明らかにされていない.
本研究では,粒子法固液混相流モデルに液架橋力モデルを組み込み,飽和−不飽和浸透流解析と結合する.不飽和帯を考慮した前浜漂砂素過程の二次元解析から,不飽和帯が遡上距離および漂砂量に及ぼす影響を検討する.遡上波による汀線更新に海浜の水分保持状態が影響し得ることを示し,また,サクションに起因する砂要素間の付着力により強化された要素間結合が,遡上波先端部の漂砂量を低減させることを示す.