海水混合運転による下水処理水放流が沿岸海洋環境に及ぼす影響について

抄録

　大阪湾の湾口の1つである明石海峡北東岸に放流渠を有する垂水下水処理場では，隣接するノリ養殖場への影響緩和を目的として周囲の海水と処理水を混合希釈してから海洋放流する季節運転を行っている．本研究では，海水混合運転の海洋環境影響を定量的に評価するため，4段ネスト海洋モデルとトレーサー移流拡散モデルを連成させた処理水分散の高解像度比較数値実験を実施した．ノリ養殖場周辺では海水混合の有無によって海面水温・塩分場に有意な差は生じないものの，混合運転に伴い海面処理水濃度は大きく減少し，養殖場内での処理水蓄積量は約12.7%減少することが示された．これは，放流渠近傍で生じる鉛直循環流が強化されることで須磨沖反流を含む残差流系が変化し，処理場周辺での流速弱化等に伴う処理水分散とフラックス収支の変化によるものと考察された．