2025 年 81 巻 27 号 論文ID: 25-27022
気象や地理の全球データは無観測流域の水文解析に有効である.しかし,小流域に対しては空間解像度が粗く,流出に関して現状では十分な解析精度は得られていない.そこで本研究では,流域面積が数百km2規模の地上雨量観測が充実している国内の流域において,全球データ(GSMaP降水量,JRA-3Q気温,MERIT DEM)を入力値とした日単位の水循環解析を行い,全球データの小流域への適用性を検討した.使用した水循環モデルは,Diskin–Nazimovの雨水浸透モデルと貯留関数式を組み合わせた簡易構造のモデルである.GSMaP降水量の適用に際し,①GSMaP降水量と地上観測データから求めた流域平均降水量との近似式によるバイアス補正,及び,②GSMaP降水量を地上観測データの年降水量に整合させる水収支補正,の2つの手法を試みた.解析の結果,ハイドログラフの再現性は近似式によるバイアス補正の方が年降水量の補正より若干精度は良かった.しかし,流況曲線の比較では,年降水量補正の方が良好な精度が得られた.両者とも解析誤差に課題は残るものの,水収支を踏まえて年降水量を整合させる補正手法は,全球データの地域スケールへの適用に期待できる.