抄録
現在,我が国の水産資源増殖の施策として,稚魚放流事業と増殖場造成という2種類の事業が推進されている.しかし,それらが別々の行政部門で相互の連携が弱い状況で行われてきたため,造成された増殖場を稚魚放流場所として活用されることが不十分であった.また,元々,増殖場造成用の構造物は,放流用稚魚の保護を目的としていないため,それらの構造物に放流した場合,天敵生物による捕食により,稚魚放流後の歩留まりがほとんど期待できないという現状で,稚魚の資源への加入が困難という状況に陥っている.この問題を克服するために,岩礁性魚類幼稚魚にとって天敵生物からの捕食圧を低減し,保護される場所を提供することは,放流稚魚生残率を高めるために極めて有用なものとなる.しかし,放流稚魚の保護用に,適正な基質をどのような間隔で,どのように配置すればよいかという点について,これまで検討された例はなかったことから,本研究では,この点について解明することとした.