2014 年 70 巻 2 号 p. I_1068-I_1073
熱帯性海草の一種であるウミショウブは八重山諸島周辺海域が分布北限であり,環境省RDBでは絶滅危惧II類に掲載されている.本種は西表島の一部で群落の衰退・消失が確認されているが,島内広域における分布の現状は不明である.一方,本種の生活史や生育や分布の条件に関する知見は少なく,群落が本格的に衰退・消失する前に,分布・群落状態および生育環境条件について明らかにする必要がある.
そこで,西表島北西部の浦内湾~崎山湾にかけてウミショウブの分布を調査し,群落の形成される環境の物理場について検討を行った.その結果,ウミショウブの分布する環境は,D.L.±0.0~-0.5mの水深の外洋と比較して波浪の影響が小さい内湾に分布していたが,密生状態の群落が形成されている範囲はウミショウブが生育していた海岸延長の14%に過ぎなかった.