2014 年 70 巻 2 号 p. I_1200-I_1205
九州地方は台風常襲地帯であり,さらに将来的には地球温暖化による台風の強大化が懸念されている.有明海における将来の高潮予測については気象研究所の超高解像度全球大気モデル(MRI-AGCM3.2S)の将来予測値にもとづく結果が報告されているが,AGCM3.2Sは強度が過大であり,将来予測値をそのまま将来の台風強度と想定すると高潮予測が過大となることが推察される.本研究では,将来の台風強度の想定方法を検討し,気候変動モデルの持つ特性を考慮した補正を行ったうえで,有明海沿岸での最大高潮偏差を推算した.その結果,補正により高潮偏差の値は大きく減少するものの,有明海湾奥部で現行の計画潮位偏差(2.36m)を超える約2.8mの高潮偏差が生じる可能性が示された.