2014 年 70 巻 2 号 p. I_1206-I_1211
2013年台風Yolanda(Haiyan)はフィリピンに史上最悪の被害をもたらした.このような前例のない災害の物理的な特性を科学的に検証するため,台風強度の統計的分析および現地調査と数値解析により高潮の空間分布を推定した.この結果,北西太平洋で過去62年間に発生した1,960個の台風のうち,Yolandaは上陸時の風速が過去最大,平均的な台風の2倍の進行速度で上陸したなどの特異性を定量的に示した.人的な被害の大部分はLeyte湾で発生した高潮によるものであったが,現地調査においてはLeyte湾全域で2m以上,最奥部では4m以上の範囲が広がり,局所的には7m以上の浸水が発生した場所も確認された.経験的台風モデルに基づく高潮解析でも,このような湾内での高潮分布の特徴を再現できることを示した.