2016 年 72 巻 2 号 p. I_187-I_192
本研究では岩手県浪板海岸において,東日本大震災後の年間を通じた漂砂動態の把握を目的としたカラーサンドの追跡調査と,震災時の地震による地盤沈下の影響が漂砂動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした水理模型実験を実施した.その結果,カラーサンドの追跡調査から,冬季・夏季ともに,投入した砂(d50=0.6-1.0mm)の大部分が短期間で移動限界水深地点よりも沖側に輸送される可能性は少なく,養浜で同程度の材料を用いた場合,その一部が砂浜の再形成に寄与する可能性があることがわかった.また,水理模型実験より,震災前後の地盤高によらず汀線付近では冬季に砂が減少し,夏季に増加するという震災前と同様の漂砂動態の傾向を維持しており,養浜により地盤高が回復すれば砂浜が再生される可能性があることを明らかにした.