2015 年 71 巻 2 号 p. 63-80
舗装の劣化過程は路面の劣化過程と舗装耐荷力の低下過程で構成される複合的過程である.路面の劣化と耐荷力の低下は,互いに双方の劣化過程に影響を及ぼす.本研究では,このような舗装の劣化過程を複合的マルコフ劣化モデルを用いて表現する.路面性状調査により路面の健全度が観測される.一方で耐荷力の低下はFWD調査等により観察可能である.現実の道路維持・修繕業務において,これら2種類の点検業務が同期されているわけではなく,2種類の点検情報が同時に獲得できないという問題が発生する.本研究ではこのようなシステム的なデータ欠損を考慮した複合的隠れマルコフ劣化モデルを推計する方法を提案する.さらに,NEXCOが管理する高速道路を対象とした適用事例を通して,提案した方法論の有用性について考察する.