2013 年 69 巻 4 号 p. I_1067-I_1075
首都圏直下地震の発生が懸念されている中,津波による浸水予測が大幅に厳しいものへと改訂されてきている.災害時の群衆行動を事前に検討しておくことは,被害軽減につながる重要な課題である.本研究では鎌倉市材木座沿岸部を対象に,津波災害を想定した避難シミュレーションモデルを作成し,各避難者の避難経路選択に関して高低差の考慮が,避難者全体の避難状況にどのような影響を及ぼすのかについて解析的に検討を行った.シミュレーションは市街地を対象としたためネットワーク型モデルを採用し,避難経路に関してはダイクストラ法によって避難者が経路選択を行えるように設定した.また,鎌倉市が公表している避難地区,避難ビルと経路上にある海抜10m以上の地域を,最終目的地である避難場所として設定した.該当地域の人口を避難者数として,避難場所までの最短距離を優先して経路選択する避難者と高低差を考慮した経路選択を行う避難者の人数比を変えてシミュレーションを行った結果,避難地域までの所要時間はこれらの人数比による影響は小さく,各避難場所への避難完了人数に変化が表れた.