2013 年 69 巻 4 号 p. I_942-I_957
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震では,広範囲で極めて甚大な人的・物的被害が生じた.人的被害の99%超が津波による.津波リスクに対する住民の避難行動の実態を知り,その特徴と避難の正否から見た問題点を明らかにするために,津波避難行動に関する509件の新聞記事を収集し,内容分析に基づいて,岩手県,宮城県の住民の津波避難行動形態と地域・生死・男女について統計的に分析した.その結果,生死別の比較から,事前避難の有効性が確認され防災活動中の切迫避難の死亡リスクが両県で際立って高かった.地形と津波歴史の異なる両県で避難行動に大きな違いがあった.また男女別の比較から,男性では両県で避難前防災活動が最多である一方,女性では岩手で用事後避難,宮城で切迫避難が最多であった.