2014 年 70 巻 4 号 p. I_304-I_322
盛土構造物の耐震設計法においては,地震時におけるすべり破壊の有無の判定あるいは地震後における残留変形量などの評価に主眼をおいたものとなっており,斜面の崩壊範囲については検討の対象となっていない.一方で,盛土構造物や自然斜面などの一般斜面では耐震設計の対象ではないが,各都道府県のがけ条例による建築禁止範囲に関する規定が存在する.そこで本研究では,既往の大規模地震により崩壊した宅地造成斜面を対象として,法肩から天端におけるすべり面の位置までの水平距離に着目した基礎的な検討を行った.その結果,一次すべりのみの検討では,崩壊実績を十分に再現することができず,一次すべりだけでなく二次すべりについても同時に考慮する必要性が高いことなどがわかった.