2014 年 70 巻 4 号 p. I_916-I_920
2011年東北地方太平洋沖地震は,当時の既往最大規模を念頭に国や多くの自治体が想定していた津波の高さをはるかに上回る,かつて経験したことのない規模の巨大津波を発生させた.その規模は,海岸堤防などの海岸構造物だけで内陸への氾濫を防ぐにはあまりにも大きく,氾濫流は推定で561km2もの広域に亘って被害をもたらした.同災害を受け,海岸堤防だけでは内陸への氾濫を防ぎきれないような巨大津波が各地で想定されるようになった.本研究では,こうした巨大津波への対策として,海岸堤防と内陸にある道路や鉄道の盛土構造物との組合せによる多重防御に注目し,その効果について数値計算を用いた基礎的な検討を行った.また,2011年東北津波における事例検討として,宮城県南三陸町志津川地区の鉄道盛土に注目して多重防御効果を評価した.